主人公

「ええーと、その……戒くんって趣味とかある？」

宗像 戒

「趣味……温泉巡りとか、バイク」

主人公

「……なんか渋いね」

宗像 戒

「あと、神社仏閣も好き」

主人公

「えっ……」

宗像 戒

「似合わない？」

主人公

「目立ちそうだなーって……」

宗像 戒

「逆にどんなイメージだった？」

主人公

「クラブとかで飲んでそうな……」

宗像 戒

「はは、テンプレ」

主人公

「……ふふ」

宗像 戒

「君ってさ、かわいいね」

主人公

「へっ！？ ど、どうも……。
戒くんみたいにキレイな人に言われると複雑だけど」

宗像 戒

「……？ 俺がキレイ？」

主人公

「うん。見惚れちゃうくらいキレイ」

宗像 戒

「えっ！？」

主人公

「えっ？」

宗像 戒

「……その……ありがとう」

主人公

（…………照れてる……）

素早くジェネを閉じようとした、その瞬間。
……視界が光に包まれる。

とっさに瞑った目をどうにか開くと――

目の前に、『なにか』が現れていた。

主人公

「――……！？」

永守 藍

「は……？」

主人公

「！！！　ここここれ！！！
昨日夜中に！　出たやつ！」

永守 藍

「映像……扉……？」

主人公

「ほら嘘じゃなかった！！　藍も見えてる！？」

永守 藍

「見えてる……けど、
なんだこれ、どういう原理で……」

主人公

「ぎゃー！　なんか光った！
もうやだ……――ハッ。ら、藍、逃げよう！」

永守 藍

「お、おい、落ち着けって。下手に動くな」

主人公

「だだだ大丈夫だから、私が守るからね！」

永守 藍

「いや、そんな涙目で
膝ガクガクさせながら言われても……」

震える手で藍の腕を掴んで、逃げようとした。
……けれど、どうしてか指に力が入らなくて。

主人公

（あ、れ……？）

――麻酔でも打たれたみたいに、
意識がゆっくりと薄れていく。

主人公

（いや麻酔とか打たれたことないし、
わかんないけど……）

場違いなことを思いながら倒れていく私の身体を、
藍が抱き留めてくれるのが分かった。

主人公

「逃げて、藍……」

最後の力を振り絞って声を出したけど、
もう指の一本も動かせない。

永守 藍

「この歌……」

意識を失う直前に見たのは――

周囲を包み込む光と、目を見開く藍の姿だった。

主人公

（シャワーの音……え、まさか）

――ここは奏壱さんの部屋。
そして私の視界の範囲内には、彼はいない。

主人公

（そんな漫画みたいな展開……ないよね？）

そう思った次の瞬間――

弥坂奏壱

「…………」

主人公

「…………」

互いの顔を見つめて、時が止まる。
私の目の前には、腰にバスタオルを巻いて
立ち尽くす奏壱さんの姿があった。

弥坂奏壱

「…………………え？」

弥坂奏壱

「……わーっ！？」

主人公

「ぎゃー！？」

弥坂奏壱

「環無さん！？　ど、どうしてここに」

主人公

「す、す、すみません！　なにがなんだか私も！」

弥坂奏壱

「あっぶな……
僕、いつもお風呂出るとき素っ裸なので」

主人公

「ええっ危な！」

弥坂奏壱

「そのまま出てこなくてよかったです」

主人公

「はい、本当に！」

弥坂奏壱

「今日はたまたま、ログイン直前に今週の占いを見て、
ラッキーアイテムがバスタオルで……」

主人公

「や、その情報いいので、服を着てください……！」

主人公

「……ユーリさん？」

ユーリ

「前にオレの頭撫でてくれたでしょ。
あのとき嬉しかったから、お返し」

主人公

「あれはユーリさんがしてほしいって言ったからで……」

ユーリ

「あ、ごめん。嫌だった？
てか……デリカシーないやつか、これ」

主人公

「い、いえ。嫌では……ないです」

ユーリ

「よかったー。
せっかく相棒になれたってのに、
いきなり嫌われたくないしさ」

主人公

（人の頭を撫でるのも久しぶりだったけど……
撫でられるのも何年ぶりなんだろう）

こうして触れられても嫌な感じはなくて、
むしろなんだか心地いい。

主人公

（……けど、なんというか……）

思いのほか優しい手つきに、
段々と気恥ずかしくもなってくる。

ユーリ

「アンタは頑張ってるよ」

ユーリ

「オレたちは自分の意志だけど、
アンタは無理やり連れて来られて……
なのに他人のために必死になってる」

主人公

「……ユーリさんが声をかけてくれなかったら、 たぶん部屋に閉じこもってました」

ユーリ

「でも、今はこうやって前を向いてるじゃん」