刹那の浮遊感が過ぎた後、わたしの身体は吸い込まれるみたいに落ち始める。
ぞっとするような、その感触に怯えた瞬間。
- 主人公
- 「――きゃあっ!?」
不意の衝撃を受けて世界が揺れる。
- 主人公
- (な、なに!? 引っ張り上げられた?)
真っ逆さまに落ちるはずだったわたしは、
高台の上で転がっていた。
- 主人公
- (……手も足も動く。覚悟してたのより全然痛くない!)
でも、目の前の危機はまだ去っていない。
急いで身を起こそうとしたわたしの頭上で、
目映い白刃が閃き――
- 矢代
- 「っ……!」
- 主人公
- 「え……?」
唇から間の抜けた声が洩れた。
名も知らない青年が、わたしを守るように立っている。
朱の陽光を照り返す刃と針が噛み合って、
鈍く金属の音を立てる。
- 矢代
- 「はあっ――!」
弾かれるようにして離れた黒衣の少年が、
間髪入れずに再び地を蹴る。
- 主人公
- 「!」
斬り結ぶ中で青年の腕が裂け、鮮血が散った。
しかし、彼は怯まず、さらに大きく踏み込む。
何の恐怖も感じていないかのような太刀筋は
迷いがなく、美しくさえあった。