露草 Happy Birthday! – 泡沫のユークロニア =スタッフコラム=

2025.03.26

露草 Happy Birthday!

『泡沫のユークロニア』スタッフコラムをご覧の皆様、こんばんは。
本作のディレクター、ティズクリエイションの高村 旭と申します。

つい先日、年が明けたと思ったらもうあったかくなり始めていて
なんだか浦島太郎になった気分の今日この頃です。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
いつの間にやらFDの情報もどどんと出てまして、予約なんかも始まっておりまして。
店舗特典、イラストもテキストも、どれもめちゃくちゃ気合い入れて書いてますのでぜひぜひ推しの特典をゲットしてくださいませ!

そして、気づけば一周年ももう間近!
「泡沫のユークロニア 1st Anniversary Shop」でもRiRiがイラストを描きおろさせていただいています!
こちらも素敵なグッズをたくさん作っていただいたので楽しみにしてくださいませね~!

と、業務連絡を済ませたところで。
皆様きっとお待ちかねかと思いますので、さっそく本題に参りたいと思います!
本日は露草の誕生日!
公式XでRiRiさんの描きおろしイラストや録りおろしボイスも
公開されていますが、せっかくですのでこちらのコラムでは
小話をお届けします!

※注意※
・この小話はエンディング後設定になります。
・ネタバレ要素はないですが、気になる方は自己責任での閲覧をお願い致します。
・主人公の名前表記はデフォルト設定とさせて頂きます。


――弥生の28日。

露草
「や、ったあ……」

納品を済ませて半月堂に帰りついたおれは、
畳の上にばったりと倒れ伏す。

今回の依頼は、開かなくなったカラクリ棚の修理。

仕掛け自体は簡単だけど、直す箇所が無数にあって
途中から逃げ出したくなった。

露草
(遣り甲斐があるくらい複雑な機構だったら、
 やる気も出たのにさ……)

露草
(……なんて、文句を言いつつも実際に
 修理し始めたらそれはそれで結構
 楽しかったんだけど!)

とにもかくにも。

やっと締め切りが明けたんだから、
これで久し振りに惰眠を貪れるってもん。

露草
「おれ、ほんっと頑張った……えら……」

達成感で胸がいっぱい。
その上、カラクリ欲まで満たされた。

清々しい気持ちで目を閉じた、そのとき。

――ふと、脳裏を過ぎる記憶があった。

露草
(そういや、2日前くらいだっけ?
 修羅場の真っ最中に、あの子が
 来てくれたんだよね)

露草
(ちょっとでも顔を見て、話せて
 うれしかったなー……)

露草
(おかげで最後の山を乗り切れた。
 ほんと、おれにとってあの子は
 元気の源なんだよね)

しみじみと感じ入りながら、
眠りに落ちようとしたとき。

不意に胸騒ぎがした。

露草
「…………2日、前?」

何かが引っかかる。

のろのろと上半身を起こし、暦を確認する。

露草
「……………………2日前って、ちょうど
 おれの誕生日じゃん? すごい偶然――」

露草
「なわけないよねえ!? も、もしかして、
 おれの誕生日祝いに来てくれてた!?」

露草
「うわ!! なのに!! おれのばか!!」

おれは悲鳴を上げると半月堂を飛び出し、
命懸けの全力疾走で城下街を目指した。

***

東五の屋敷に辿り着いたおれがリビングに
駆け込んでいくと――

ちょうどお茶の時間だったらしい彼女が、
びっくりしたように目を丸くする。

雛菊
「ど、どうしたの、露草? 大丈夫……?」

露草
「ぜ、ぇー……っ……」

おれはすっかり息も絶え絶えだ。

まともに呼吸ができず、声も出ない。

露草
「ふ、ひゅー……ひゅー……!」

弱々しい身振り手振りで、なんとか
意思疎通しようとおれは必死に訴える。

雛菊
「あ、誕生日だって気づいたの?
 お仕事はもう終わった?」

露草
「っ……げほっ……!」

雛菊
「そっか。お疲れ様、露草」

彼女は大体理解してくれたみたいで、
優しく微笑んだ。……かわいい。最高。

続くおれの挙動を見て、首を傾げる。

雛菊
「……それは――来てくれて
 うれしかった、ってこと?」

露草
「かひゅっ……」

ぶんぶんと首を縦に振り、肯定する。

雛菊
「もう……」

露草
「ご、ごめん……怒ってる……?」

彼女は頬を膨らませてる。
うわ。やば、かわいい。ほんとごめん。

混乱してるおれを見つめ、雛菊は
ふふ、と小さく笑った。

雛菊
「誕生日おめでとう、露草」

露草
(かっわいい……!)

……だからこそ、自分が情けない。

露草
「おれって、ほーんとばか……。
 わざわざ雛菊が来てくれたのに……」

こんなかわいくて最高の恋人を、
悲しませるような真似しちゃうなんて。

雛菊
「好きなものに集中できるのって、
 露草のいいところだよ?」

露草
「えっ?」

雛菊
「……わたし、頑張る露草が好き。
 真剣に取り組むのって、格好いいと思う」

露草
「ひ、ひなぎく……」

きゅん……。

露草
「の、納品も終わったし、遊ぼ!?
 あんたが何してたか聞きたい!」

雛菊
「うん!」

……雛菊の笑顔って、世界を救うと思う。

雛菊
「実はね、露草に贈り物も用意したんだ」

露草
「そ、それ、うれしすぎ……!」

もう、おれ、感動で泣きそう。

露草
(……幸せ、だなあ……)

だめなおれのことを気にかけて、
受け入れてくれる――

かわいくて、優しい、おれの恋人。

露草
(おれ、自分の誕生日には興味なくて
 今までも忘れがちだったけど)

露草
(一度だって、この子の誕生日は
 忘れたことないよ)

これまでも、これからも、ずっと。

この子のことなら、なんだって覚えてる。


ということで露草、誕生日おめでとうございました!

ぜひ皆様もお祝いしていただけたら嬉しいです₍₍(∩´ ᵕ `∩)⁾⁾

edited by :
高村さん