依 Happy Birthday! – 泡沫のユークロニア =スタッフコラム=

2025.01.24

依 Happy Birthday!

『泡沫のユークロニア』スタッフコラムをご覧の皆様、こんばんは。
本作のディレクター、ティズクリエイションの高村 旭と申します。

年が……あけた……!? もう……!?
という驚きとともに今日もコラムを書いています。
(このコラム、大体いつも驚いてる。)

昨年はゲームの発売や「LicoBiTs FESTA 〜feat.ユークロ感謝祭〜」の開催もあり盛りだくさんな一年でしたね。
(詳しくはブロッコリーのスタッフさんが年末に書いてくださった素敵コラムをご参照くださいませ!)

リコフェスではFDの情報も無事解禁(詳細は現在発売中のB’s-LOGをご確認くださいませ!)となりまして!
とにかく、めちゃくちゃ駆け抜けた1年だったなあと思いつつ。
今年も昨年同様駆け抜けていきたいと思いますので、ぜひ引き続き応援していただけますと幸いです!

さてさて。それでは、そろそろ本題に参りましょう。
本日は依の誕生日!
公式XでRiRiさんの描きおろしイラストや録りおろしボイスも
公開されていますが、せっかくですのでこちらのコラムでは
小話をお届けします!

※注意※
・この小話はエンディング後設定になります。
・ネタバレ要素はないですが、気になる方は自己責任での閲覧をお願い致します。
・主人公の名前表記はデフォルト設定とさせて頂きます。


睦月の24日――
ボクがこの世に命を受けた、祝福すべき日に。

ボクが何をしていたかというと、
普通に出仕して、普通に事務作業に勤しんだ。


(最悪)

ようやく仕事を終えて、
帰路についたはいいものの……。

藍白
「いやー。今日の依様は本当に機嫌が悪くて、
 すごかったですよね」

藍白
「ここまで殺気を放ちながら誤字の指摘とか
 できるんだ、って思いましたもん、オレ」


「…………」

うるさい部下がボクの横で囀ってる。

不愉快すぎて返事をする元気もない。

藍白
「石蕗様がそわそわしてたの、気づいてました?
 枸橘様、声もなく爆笑してましたよ」

声がなければ爆笑とは言わない、とか――

今日ばかりは、後学のためになる助言をして
あげるような気分にはなれなかった。


(どうにかして合法的に藍白を消せないかな?)

そう真剣に悩んでみたけど……。

東五の家が後見を務めるのを条件に、
泉下送りを免れてる身の上だ。

今は監視を受けないと外出もできない身。
おかげで帰り道さえ、藍白につきまとわれる始末。


(姫君に迷惑をかけると、当然の帰結として
 ボクの立場が危うくなるんだよね)

藍白
「え、何か依様、ものすごく怖い目してますね。
 もしかしてオレのこと処理しよっかなとか
 思ってます……?」


「…………」

藍白
「依様? 嘘ですよね、依様?」

***

東五の屋敷に辿り着き、やかましい部下から
解放されたときにはすっかり疲労困憊だった。


(まあ、いいんだけどね。誕生日だからって、
 この歳になれば特別なこともないし)

憂うものでもないけど、今更、うれしくもない。
ただ……。


(大半の人間が幸せになる理由を、
 今日のボクだって持ってるはずなのに)


(ボクだけ不幸せなんて不公平でしょ)

恨み言のひとつやふたつ、言いたくなるのも当然だ。


(姫君だって……。ボクの誕生日は、たぶん
 知ってると思うけど)


(ボクも、もう29歳だし?
 わざわざ祝ったりは……いや……)


(彼女のことだから、いつもより夕食を豪華に、
 くらいは淡雪に指示してくれてるかも)

そんなことを頭の片隅で考えながら、
リビングに入る。


「ただいま」

雛菊
「――お帰りなさい、依さん!」

今か今かとボクを待ってたらしい姫君は、
ぱっと顔を輝かせて椅子から立ち上がる。

雛菊
「誕生日おめでとうございます!!」

ぱんっと音が鳴って、リボンがひらひらと宙を舞った。

見たことがない形のパーティークラッカーだ。

そういえば、最近、新しいのが出たとかって
話題になっていたのを聞いた気がする。


「え」

テーブルに並んでる料理は、
ボクの想像を遥かに超えて豪華だった。

詰め物をした鶏の丸焼き、中身がわからないコロッケ、
飾り切りが綺麗なサラダ、蟹と海老のグラタンに――


(いや、うん? 豪華すぎない?)

東五の家は、当然、普段から素材は
上等なものを使っているわけだけど。

今日はさらに量もすごい。

見た目からして華やかな柚子と蜜柑の
タルトまで、ホールサイズで――


「……え。これ、福慈庵の?」

雛菊
「そうです!」

彼女は誇らしげに胸を張った。

福慈庵は最近、特に人気の菓子店だ。

聖夜祭の頃には焼き菓子から飴の缶詰まで
店にある、ありとあらゆるものが売り切れた。


「ええ……。すごいね、姫君。ありがとう」

驚き混じりのボクの反応に、
彼女はとてもうれしそうに頬を緩めた。

こういう、彼女の純粋なところを
ボクは結構、かわいいなと思ってる。


「……ここまでしてくれたんだから、
 ボクだって何か返さないとね」

雛菊
「え?」


「そうだな、姫君の誕生日には、姫君のお願いを
 なんでも聞いてあげるよ」

雛菊
「! ……本当ですか? なんでも?」


「……なんでもは嘘かもしれないけど。
 まあ、期待せずに、言うだけ言ってみたら?」

ボクは特別感なんて欠片も滲まない、
いつもと同じような笑みを浮かべて
そう言った。

けど……。

姫君のお願いなら、どんなに難しいことでも
それなりに頑張ってみようかな、って。

そんなことを思わなくもない。

気づけば、今日の不機嫌は、すっかり
ボクの中から消えていた。


ということで依、誕生日おめでとうございました!

ぜひ皆様もお祝いしていただけたら嬉しいです₍₍(∩´ ᵕ `∩)⁾⁾

edited by :
高村さん