帷 Happy Birthday! – 泡沫のユークロニア =スタッフコラム=

2024.08.10

帷 Happy Birthday!

『泡沫のユークロニア』スタッフコラムをご覧の皆様、こんばんは。
本作のディレクター、ティズクリエイションの高村 旭と申します。

ご無沙汰しておりますー!
連日の猛暑やゲリラ豪雨でおでかけも大変な今日この頃。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
世間的にはお盆休み?
おでかけもいいですが、ここまで暑いとお家の中で
のんびり、なんて過ごし方もいいですよね。
ぜひこの機会に凍玻璃に涼みに来ていただけたらと思います~₍₍(∩´ ᵕ `∩)⁾⁾

公式サイトや公式XではドラマCDやオリジナルサウンドトラック、
オフィシャルファンブックなどの情報もご紹介中ですので
ぜひこちらもチェックしてくださいませ!
こちらのコラムでも近々ご紹介させていただければと思います~!


ということで、本日は帷の誕生日!
公式XでRiRiさんの描きおろしイラストや録りおろしボイスも
公開されていますが、せっかくですのでこちらのコラムでは
小話をお届けします!




※注意※
・この小話はエンディング後設定になります。
・ネタバレ要素はないですが、気になる方は自己責任での閲覧をお願い致します。
・主人公の名前表記はデフォルト設定とさせて頂きます。


雛菊
「あ! ねえねえ、そういえばなんだけど」

その日。

オレの家を訪ねてきた姫さんは、
挨拶と天気の話を終えた後、こう切り出した。

雛菊
「帷って、何色が好き?」


「……どうしたんだよ、急に?」

雛菊
「ど、どうもしないよ?
 ただ気になったの。……何色が好き?」


「何色でも好きだが……」

そもそも特筆して嫌いな色もないが、
素直に答えるなら――

たとえば、最近は我知らず、おまえの
髪のような白菫色が目に留まるだとか。

黎明の空を見上げるたび、おまえの瞳を
思い出して恋しくなるだとか。

(そう答えていい流れか? これは)

すず音
「…………」

ふたりきりなら普通に口説くんだが、
今は、姫さんと一緒に来たすず音が
固唾を呑んで状況を見守ってる。

雛菊
「じゃあ、好きな石は?」

恐らく――

これは、返答を誤ると詰む話だ。


「なあ、姫さん。本当にどうしたんだよ。
 悪い俗言にでもかぶれたか?」

雛菊
「ええっ!? そ、そんなことないよ?」


「オレの目を見て、もう一度答えろ。
 ……何があった?」

雛菊
「……………………今日はもう帰ろうかな!」

姫さんはいそいそと畳から立ち上がると、
逃げるように出て行った。

すず音
「もう! 帷って、花街の顔役してるくせに
 変なとこで女心に鈍いよね」

すず音は事情を把握してるらしい。

(こいつが姫さんに何かしらの入れ知恵を
 したんだとすれば――……なるほど?)

(じき、オレの誕生日か)

***

――翌日、姫さんがまた訪ねてきた。

雛菊
「帷って金属とか大丈夫な人だよね?
 肌に触れるとかぶれるとか、ある?」

雛菊
「異国風の服装に抵抗ってあるかな?
 花街だと目立ちすぎて不便?」

雛菊
「何かあればいつでも頼ってね?
 欲しいものとか、困ってることとか」

(このまま放っておくと不味いな……)

適当なところで手を打ってもらわねば、
どんな高価なものを用意されるか
わかったものじゃない。


「……最近、髪がうざいんだよな」

雛菊
「髪?」


「切ると今よりガキっぽく見えそうだし、
 このまま伸ばしてようと思うんだが」

雛菊
「そっか……。そっか、うん。うん!
 わたしも帷は今くらいの長さが
 いいと思う!!」

(……上手く誘導できたか?)

姫さんは何か閃いてくれたようで、
青藤色の瞳がきらきら輝いていた。

***

葉月の10日。

姫さんと逢引きの約束をしていたオレは、
昼過ぎに東五の屋敷を訪ねると――

人を助けようという気持ちのない従者に
見過ごされ、今日も当たり前のように
彼女の部屋へ連れ込まれる。

雛菊
「帷、誕生日おめでとう!」

その言葉と共に手渡された小箱の中には、
臙脂と銀鼠の組紐。


「綺麗だな。……くれんのか?」

雛菊
「うん! 髪が邪魔だって言ってたでしょ?
 結うものがあると便利かなと思って、
 帷のために編んだんだよ」


「へえ……。姫さんが?
 案外器用なんだな。惚れ直した」

わかりやすく大喜びなんて反応は
してやれないが、想いの込められた
贈り物が純粋にうれしい。

手触りと艶を確かめれば、絹糸の他に
本金糸まで使ってくれてるとわかる。

問題は――
編み込まれてる白い石。
最初は蜻蛉玉かと思ったが、これは。


「なあ、姫さん。これ」

雛菊
「金剛石だよ? 最近流行ってるでしょ。
 わたしも帷にあげたいなと思ったんだ」

以前、装飾品は彫金細工が主流だった。

交易で異国から持ち込まれた宝石は
近年、貴族に広まりつつあるが……。

当然、庶民は手が出ない。

貴族同士でさえ婚約の証に贈るような、
眩暈がするほど高価な代物。


「お、まえな……」

雛菊
「うん?」


「色といい、石といい……。
 オレのことが好きすぎるだろ」

雛菊
「!? ……そ、それはそうでしょ?
 大好きだよ……」

どうしてくれよう。

顔を赤らめて縮こまる恋人の頬を撫で、
言葉で返す代わりに触れ得る場所の
すべてに唇を落としていく。

(……好きだ)

彼女がひたむきに向けてくれる想いと
同じだけの重さを、きっとオレも抱えてる。


ということで帷、誕生日おめでとうございました!

ぜひ皆様もお祝いしていただけたら嬉しいです₍₍(∩´ ᵕ `∩)⁾⁾

edited by :
高村さん